No40:秘蔵のエッセイ公開!Part2!~私の運命の出会い~

本づくりメルマガにご登録の皆様 こんにちは! お久しぶりの登場。あかりんです。暑くなったと思えば肌寒くなったり、体が追い付きませんね。皆さんはいかがお過ごしでしょうか。 じめじめした夜は、アイスが食べたくなります。 大学近くのセブンイレブンの駐車場に愛車を停めて、店の前で車を眺めながら食べるアイスは格別です。 さて、今回も愛車の話をします。またかよという声が聞こえます。あ、待ってください。そっとメールを閉じようとしないでください。 ただのCR-Zの話ではありません。前々回のしまちゃんのメルマガに続き、エッセイを公開します。 感動の声続出!のエッセイです。ぜひ読んでください♪ タイトル:「愛」するということ 大学1年の夏、一目ぼれをした。 すこし釣りぎみのブルーの目。 餅のような、丸みのある輪郭。 それでいて横顔は凛々しい。 いつまでも眺めていたくなる、艶のある白色ボディー。 暗がりの中、思わず布団を剥ぎ取り、慌てて眼鏡をかけた。 深夜2時、ネットで偶然出会った車に、私は心を奪われた。 CR-Z。ホンダのスポーツカー。 さらに調べると ハイブリッドで燃費もよい。 価格も中古で30万円から。 運命だと思った。 通学のために車を買おうと決意していたが、ほしい車もない。 そもそも大学生の稼ぎで車を買うなんて不可能ではないか。そう思っていた。 CR-Zに乗りたい。この車を買うためなら、頑張れる。 この日を境に私の生活は一変した。 大学2年の夏休み明けまでに50万円を貯め、CR-Zを買うと決意。 月8万円、扶養ギリギリまで稼ぎ、給料の半分を貯金した。 家計簿をつけた。 水を買うことすらもったいなくて、水筒を持参した。 買い物は基本、高崎駅内のマツモトキヨシ。 購入は10%オフクーポンが配信されている時期に限定。 美容室にも満足に通えず、ブリーチをした髪は切れてぼさぼさ。 グレーと緑が混じったような髪色になっていた。 アルバイトも掛け持ちした。派遣会社に登録し、電車の定期圏内で行ける案件にはすぐさま飛びついた。交通費がもらえたらラッキー。 ガソリンスタンドの営業では、お客さんにしっしと手であしらわれるなど、理不尽に怒られたこともあった。 それでもCR-Zが走っている姿を見かけるたび嬉しくなった。 「あ!CR-Zだ!」と声が出た。 CR-Zが実際に給油に来た時は、近くで見せてもらい、絶対に買うぞと気持ちを奮い立たせていた。 そんな生活を一年以上続け、 いざ、購入の時。神奈川県へ出発だ。 購入方法は個人売買。 ちょうどお金が貯まった9月、突如メルカリ上に現れた個体。 価格、走行距離、状態が申し分なく、おまけにブラックレーベルというちょっといい内装。 少しでも安く、少しでも好条件で。色は絶対に白色。 そんな思いでヤフオク、Twitter、カーセンサーと様々なサイトを6月ごろから巡回していた。 父の運転で高崎から2時間。 1年間恋焦がれたCR-Zは、すぐそこ。 (あ、あの雲CR-Zみたいな形してる) 「個人売買で車を買うなんて」 父の小言が右から左へ抜けていく。 相模原駅前のゆうちょ銀行で、45万円を下ろす。 分厚くはない。それなのに、口の中がカラカラに渇き、かすかに震える手で封筒に札束を丁寧にしまう。 過去に祖母が100万円の札束を触らせてくれたことがあった。 その時は100万円の重みは感じなかったように思う。 むしろ、兄と札束でビンタし合い、おもちゃのように扱っていた。 一年分の努力が詰まった札束は、ずっしりと重く感じた。 車までたったの数歩。それでも、もし今、ひったくりに襲われたら。 封筒を左わきで強く抱きしめ、足早に車に乗り込んだ。 山の中の狭い道を抜け、現地に到着。そこは民家だった。 「へぇー、個人売買って家でやるんだ」なんて思っていると、 小麦色の肌のお兄さんが出迎えてくれた。たしかフィリピンの方だったと記憶している。 「こちらへ」 車を降り、庭へ案内される。外は雨が降っていた。 ぬかるみをよけつつ、案内されるままについていく。 (やっと、やっと会える) 気持ちが焦り、自然と早歩きになる。 (CR-Zはどこだ) 雑草だらけの庭には、売り物なのだろう車が2台ほど置かれていた。 おそらく外国産の旧車と日本製の軽自動車。2台ともナンバーが取り外され、旧車の方は塗装が一部はがれていた。車に限らず、手入れされずに放置されているものを見るとなんだか不気味な感じがする。 あたりを見回しながら大股で歩く。傘からはみ出した肩に雨粒が落ちても、全く気にならない。 この車を買うために苦しい節約生活に耐えぬいた。周りの友達が次々に車通学をはじめても、可愛いコスメやヘアカラーを楽しんでいても。 ただ働いて、出費を削って、貯めた。 CR-Zのためなら耐えられた。街中で出会えただけで、画面の中のCR-Zを眺めるだけで力になった。 庭からさらに裏に回り込んだ場所に、CR-Zはいた。 「……あれ。」 雨に打たれ、高く伸びた雑草に埋まるようにその車はいた。 やけに黄色がかったような白で、酷くくすんで見える。 プレミアムパールホワイトというより、クリーム色じゃないか。 傘を叩く雨音が急に大きくなり、首筋に雨粒が一滴。 ぶるりと震えながら傘を持ち直す。 ナンバープレートはついておらず、長い間人に乗られていないことを察する。 つやつやと輝くボディーで元気に走り回る姿を想像していた私は、言葉を失った。 (いかんいかん。私は現車確認に来たのだ。) CR-Z特有の車体に溶け込む形状のノブ。 手をかけると、手に水滴がつく。 「…開けにくい」 中をのぞき込むと籠った空気が頬をなでる。車内は黒で統一され、どんよりと暗く感じた。 「暗くて狭い…」 後部座席はあるが、足の置き場はほぼない。 そっとドアを閉じ、CR-Zに背を向けた。 「やっぱり買うのやめようかな。フィットとかの方がいいよ」 「えっ、ここまで来たのに?」 マリッジブルーならぬ「大きい買い物前ブルー」になっていた私に父は困惑していた。 買おうと意気込んで来たはずなのに。「買います」と言ってしまえば、もうお金は戻って来ない。維持するためにアルバイトに明け暮れる日々の始まりだ。 1年分の期待と努力が高いハードルとなり私の前に立ちはだかっていた。 (この45万円を本当に渡してしまっていいのか。でも、これ以上にいい条件のCR-Zはもう出てこない。でも…でも…) (なんか、想像と違う!!) 「あのーもう少し悩んでも…」 「うん。いいですよ。でもこの車人気でいろんな方から連絡もらってる。売ってしまうかも」 心を揺さぶるお兄さんの一言。 そりゃそうだ。これだけ条件がいい車に声がかからないわけがない。 ふと、雨の音が遠のく。 (なんで私、車買いたいんだっけ) かばんの中の封筒に目をやる。 涙を必死にこらえて、マスクの下で唇を噛んで、バイトをした日を思い出す。 (そうだ、諦めたくなかったんだ。親が車を買ってくれないからって、人のせいにしたくなかった。私も車で通学したい。便利に過ごしたい。だから自分でやってやろうって思ったんだ) もし、CR-Zと出会っていなかったら、これまでの生活に耐えきることはできなかっただろう。 思考の波が次第に穏やかになった。 CR-Zと生きていくことを決めた。 「買います。」 封筒を手渡すとき、かすかに指先が震えた。心臓の音が近い。 お金を数えるお兄さんを見ながら私は腹をくくった。 (この車を買ったことを必ず正解にする。) 人生で最大の覚悟を決めた瞬間だった。 1カ月ほどして、車検やもろもろの手続きを終えたCR-Zが家にやってきた。 「はぁーーーーいい顔!」 意味もなくカーテンを開け、家の中から車庫を眺めたり、 エンジンもかけないのに運転席に座ったり、 いろいろな角度から写真を撮った。 車検の際に洗車もしてもらったようで、太陽の下で真っ白なボディーを輝かせている。 (ビジュいい!やっぱり白買ってよかった!最高!) 買った時のブルーな気持ちはどこへやら、私はCR-Zにデレデレだった。 「タイヤが1本、劣化していますね。はやめに交換してください。」 CR-Zの購入から2度めの夏。タイヤ交換の際に言われた。 「タイヤ1本、20900円です。」 タイヤ1本2万円!?1本だけ変えるのはバランスが悪くなる。4本買い換えると…… さらに1本だけすり減ったと言うことは恐らく足回りが悪くなっている。えっと、工賃はいくらだ…… 「………………。」 1度考えるのをやめよう。 そんなことを思いながら帰宅すると、自動車税の請求書が届いていた。 「くそぅ、私よりお前の方が金かかってるんだからな」 愚痴をこぼしながらも CR-Zのためなら喜んで財布を開いてしまう。CR-Z用の貯金もしていて予測不能のトラブルもどんとこいだ。 結局、状態の良い中古タイヤをメルカリ上で発掘し、取り付けた。 宇都宮まで下道を使ってタイヤ受け取りに行った。送料より安いからだ。 え、ケチってるじゃないかって? 大学生が車を維持するには、工夫が必要です。 「その原動力はどこから来るんですか?」 多くの人から質問をいただく。 私はCR-Zを愛している。正確には「愛するために努力」をしている。 『「愛」するための哲学』(白鳥春彦) によると、「愛は真の経験を通じてのみ育つ。真の経験とは誠実で全身で取り組み、自分の内側に変化をもたらす経験である」 という。 当時、この言葉の意味が分からなかった。 だけど、CR-Zとの経験を通して今、私はこの言葉が理解できる。 10代の最後はアルバイトに明け暮れ、身だしなみにまで気が回らなかった。若い時間をこいつに捧げた。これが私の真の経験だ。 個人売買を選んだことも、タイヤ交換でも、お金がないなりに調べて、工夫して必死になってやる。お金がないことを理由に手入れを怠ることはしない。 私なりに車を養うことに誠実に、全身で取り組んでいる。 この「真の経験」を通して、私はCR-Zに対してパートナーのような、モノ以上の豊かさを見出し、「愛」車と呼ぶのだ。 「あ!CR-Zだ!」 街中でCR-Zを見かけると、いまだに反応してしまう。 ハンドルから手を離せないから、指はさせない。目で追うだけ。 グレーもかっこいい。 だけどやっぱり、私のCR-Zが一番。 ハンドルをそっと撫でて再びアクセルを踏む。 応えるようにCR-Zが走り出す。 画面の中じゃない、本物のCR-Zは 少々手がかかるが、最高に愛おしい。 いかがだったでしょうか。 やっぱり愛車は私の生活を豊かにしてくれます。 春からは上京するため、CR-Zと過ごせるのはあと半年ほどしかありません。 いっぱいCR-Zに乗って、思い出作るぞー! 次回のメルマガもお楽しみに! ━━━━━━━━━━━━━━━━ 読み書きラボ 5期生 あかりん e-mail: yomikakihci.4@gmail.com ━━━━━━━━━━━━━━━━ 🐴ご意見・ご感想お気軽に☆ yomikakihci.4@gmail.com 🌱SNS・公式HPリンク *Instagram* https://www.instagram.com/hci_book.lab_5/  * X(旧Twitter)* https://x.com/QuoteShibata *公式HP* https://hci-book.inf.gunma-u.ac.jp/ *過去のメルマガ一覧* https://hci-book.inf.gunma-u.ac.jp/newsletter.php ✉️メルマガは下のフォームでご登録ください(お知り合いへのご紹介用に): https://forms.gle/YZfU9R9S7hRSTyuH8 📖読み書きラボ: https://yomikaki.inf.gunma-u.ac.jp/index.html 群馬大学の読み書きラボは「読み書きをとおして人と街を豊かにすること」を目的に活動中。 有志学生が0から企画・印刷まで1冊の本を作る「本づくりプロジェクト」では、 現在、5期生6人と6期生1人で活動しています! 今後の配信もお楽しみに! <a class="button" href="https://forms.gle/YZfU9R9S7hRSTyuH8">メルマガ登録</a>